京都ちーびず
ちーびず推進員が京都府内のちーびず(地域力ビジネス)を体験・体感して報告します!

美山・下区の発酵食、鯖の『へしこ』で技と元気を伝承

ちーびず応援カフェ(京都府主催)とは
応援カフェは、継続的な地域づくり(京都ちーびず=地域力ビジネス)を目指すみなさんが、交流しながら、ブラッシュアップや新しく楽しいコラボをつくり出す場です。
この記事に登場するちーびずさん
澤田利通さん(美山・下区)
澤田利通さん(美山・下区)鯖の発酵食(へしこ、なれずし)という伝承食を地域の元気づくりと世代をつなぐツールに活用するリーダー

雨の多い最近の美山です。この頃から天気予報は京都北部を見る土地柄です。

独特の異臭を放つカメムシ、当地では『くさむし』というのですがこの秋はやけに多くて・・・。「今年は雪が多いかもしれんで~」といった会話もおじいちゃん、おばあちゃんの挨拶に加わるようになりました。

美山と言えば最近は『あ~あのかやぶきの。』と、どこへ行っても答えていただくようになりました。

美山・下区とは?

今日ご紹介するのは、そのかやぶき集落からさらに車で10分ほどにある『下』-『しも』区です。

車で10分ですが直進するのではなく、途中で左に折れます。

「あ~脇道に入るのね」・・・感覚としてはそうなるのですが、いえいえ、それが昔からの街道なのです。

若狭から京へ『鯖-さば』を運んだ鯖街道。少しでも早く、早くと山を越えていく鯖街道はいくつかあるのですが、下区を通るのは、八ケ峰峠を越え京北・弓削へ入り京の都へ通じる、西の鯖街道の一つです。

城址があったり、戦国の世の伝承話が残っていたり、仏教布教のなごりの寺があり・・・という、人がつないで750年ほどの歴史ある集落だからこそ、鯖の伝承食が残っているのでしょう。

地域の元気づくりをソーシャルビジネスで持続可能な活動にする『ちーびず』。地域の活動・思いなどを理解し、具体的に進めるアイデアを考えたり意見を出す『応援カフェ』が、下区で開催されました。その魅力をどう伝えればいいかを探るために。

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伝承食の持つ力

地域に脈々とある伝承食。その多くは究極のスローフードです。

下区に伝わる「なれずし」「へしこ」も然り。

山に囲まれた美山ではあるけれど、若狭から京の都へ向かう街道筋であったからこそ手に入った鯖。さて、どうしたらこれが保存できるのか?

鯖と共にもたらされたであろう塩と米作りでできる糠。先人の知恵で生み出された『発酵』という技。

農を生業とした日本が誇るこの技術は、現在もさらなるパワーが解明され世界からも大注目の文化です。

しかし、スローフードゆえの悲しい時代の流れ。時間と手間のかかる食文化はだんだん敬遠されるようになります。

それは、美山とて同じ。いつの頃からか農作業や食文化を支えていた女性たちが『職』を求めて外へ出るようになります。

過疎化が高齢化に拍車をかけ、地域が疲弊してゆく・・・加えて獣害。特に伝承食に防腐目的で使われていた笹の減少。もう絶滅に近い状態は、京都の和菓子屋さんも困惑されるほどです。

次代へ受け継ぎたい、自然と誇り

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そんな時、立ち上がったリーダーがいました!澤田利通さん、そして下集落の皆さん!

限界集落という言葉がすぐそこに見えてきた中でもこの集落では、入院したり施設入所される方がないほど皆さんお元気だそうです。

一人で続けることは難しくても、みんなの力を合わせればいいのでは?

文化・農業・販売・・・それぞれに担当に分かれていろいろな取り組みを始められました。

もともと、行事などにも積極的に参加される地域性。昔は食品加工し、法事などの仕出しもされていたそうです。

その中でもっとも残したく、伝えたく、誇りとしたいもの・・・それが『なれずし』と『へしこ』です。

なれずしは時期が過ぎているので、この日いただいたのはへしこと味噌汁。発酵食の代表です。

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へしこのおにぎり 野菜たっぷり味噌汁(味噌はもちろん手前味噌)

祭りに合わせて仕込む『なれずし』

当地では、祭りとは収穫の秋、10月初旬。そこから逆算して9月下旬に漬け込みます。ハレの日の食文化です。

一夜干し程度の開いた鯖にご飯を詰め、笹の葉と交互にびっちりと樽に敷き詰めます。途中で塩水は加えますが塩の絶妙な加減が発酵を進めます。天地を返し水を抜き、祭りのご馳走になります。

よく鮒ずしと例えられますが、もう少し発酵は浅く、鯖寿司とは一味違うという感じでしょうか?

人によってはクセがあると嫌う方も多いです。美山で生まれ育った方も食べないという方は結構いらっしゃいます。なのに、私は大の好物で、この時期うきうきです。ただ、うちも義母が作らなくなってからはご近所からいただくのみ「あんたが作れよ!」と、突っ込まれそうですが(・・;)現役引退したら、引き継ぎます_| ̄|○

うれしいことに、「やはり、残したい!伝えたい!」という機運は高まっており、伝承食教室はシニア世代に人気です。

発酵というきわめてデリケートな技術のため、期間限定です。だからこそ貴重です。プロ(達人おばあちゃん)でも、気候やいろんな条件で失敗されることもあるというほどです。

一切れでおかわりができる『へしこ』

簡単に言うと、鯖の糠漬けです。漬物のきゅうりやナスが鯖に置き換わったと考えていただくとわかりやすいでしょうか?系統としては、アンチョビ?某レシピサイトでも、アンチョビの代わりに使ったパスタなどが掲載されています。

いったん塩漬けされた鯖の「ケ」を出します(塩気を抜く)。そして、半年ほど糠で漬けます(地域によってもいろいろな方法があると思います)。

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昭和10年頃の水力発電の思い出も交え、へしこの作業を説明くださる安田さん

あとは、グリルで魚の切り身を焼く要領で。お酒のお供にもなります。夏場の塩分補給としたとも言われますが、年中食卓には上ります。現代では塩分過多になると昔ほど食べられなくはなりましたが。

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この『へしこ』。個人的にもとっても思い出深いものなんです。

嫁いだ頃、未知の物体であった『へしこ』。「焼いといて~」と言われ疑いもせず、糠をきれいに落として焼き(だって、漬物は糠落とすじゃないですか!)、義父に大笑いされたことがあります。よくまあ、叱られなかったと思いますね(・・;)たぶん、想定外の行動で笑うしかなかったんでしょう・・・。

澤田さんがおっしゃいました。

「残したい、伝えたい。お年寄りの知恵と技。今に受け入れられる製品とするために費やした時間は10年。しかしその間、作業を通して地域の絆づくり、コミュニティの復活にもつながった。地域に誇りを持て、子世代へ受け継ぎたいという流れができた」

それどころか、この地域で新しく生産されるようになった葡萄は「味が濃厚」と道の駅でも大評判。もう次の一手は打たれているようです。

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料理自慢の方もコミュニティカフェがやりたいんです!とおっしゃる方も登場。

地区自前の加工所も完成間近だそう。次から次から元気あふれる地域です。

地元小学校は統合されましたが、少子化を見越して『山村留学』にも早くから取り組まれ、下区には寮があります。

こうした誇れる地域の大人を見て育つ子供たちがどんな成長をしてくれるのか楽しみですね。

集落には、滝がある清流での川遊び、歴史探索、炭焼きなど農林体験など、ファミリーでも楽しめるところがいっぱいです。

もうすぐ、雪遊びもできるはずです。ぜひお出かけください。集落の方に気軽にお声かけていただければ思わぬ出会いがあるかもですよ。

ちーびず推進員メモ

応援カフェとは、活動をアピールしたり知ってもらう場。ちーびず推進員や関係者と交流することでアイデアをもらったり、活動を広げる場です。このほかにも、フランクな勉強会「ちーびずサロン」、製品やサービスの共同販売「ちーびずマルシェ」など、企画・アドバイス・PR・販売促進や、コーディネートのお手伝いをしています。
お気軽に、京都府地域力ビジネス課(TEL:075-414-4865)やちーびず推進員にお問い合わせください。
竹嶋貴代美
by
亀岡に生まれ育ち、美山に嫁いで三十余年。家業(電気・水道工事店)の傍ら、婦人会・PTA・自治会・商工会女性部などで地域活動に参画。現在は『老活サポート』もおこなっています。 『森の京都』地域を中心にちーびず活動をお手伝いします。
(有)竹島電機ホームページ:http://www.athome-nantan.jp/
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